施工事例
素材感と開放感に魅せられるおもてなしの空間づくり。
住まいの提案、北海道。 vol.41
取材・文/三枝史子 撮影/KEN 五島
木のアクセントを配した渋い土色の塗り壁が、静かな風格を漂わせる邸宅。杉板の木を施したコンクリート塀を抜けると、エントランスポーチがゆったりと構えている。ずしりと重い木製の扉を開ければ、贅沢なまでの広さを確保した玄関ホール。土間部分の壁は外壁と同じ仕上げにして、内とと外の境界を感じさせないデザインとした。
おもてなしを意識したというこの空間こそ、住まいを語るプロローグにふさわしい。
お子さんの成長に伴い、それまで住んでいたマンションが手狭になり、一戸建てで地に足の着いたていねいな暮らしがしたくなったと、
オーナーのNさん。家族とともにつくる住まいづくりで定評があるマルワホーム企画をパートナーに、自然素材と人工建材のコラボ、内と外の融合、先進技術の投入、そして、人をもてなす空間づくりや遊び心など、住まいの理想をカタチにしたのである。
ダイニングキッチンを中心に、人の集える空間づくりが設計のコンセプト。開放感あふれる吹き抜けや、内と外をつなぐ中間領域美しくデザインすることで、生活の豊かさ、精神的なやすらぎが深まっていく。中庭の存在は住空間を明るく心地よいものにし、ホームパーティにもぴったりの場所にした。
中庭に面する窓は木製サッシを使い、温もりある雰囲気に。和室奥のハイサイドライトからの光は時の移ろいを感じさせ、吹き抜けも3カ所設けることで2階との自然な一体感を演出。お茶やディナーのあと、少し離れたリビングへ移動するのも気分が変わって楽しい。
2次会のような感覚でおしゃべりに花を咲かせ、疲れたら奥の小上がりで小休止なんてことも、この家ではふつうにできてしまうのだ。
1階の床には銘木として知られるタガヤサンを採用。重厚感ある黒褐色は木が持つ天然の色であり、珪藻土の壁と響き合う。空間全体を満たす品のいい質感は、吟味された素材のなせる技。それでいて、パナソニックやTOTOなど質の高い建材も適度に取り入れ、自然素材と人工建材が共存する住空間の創造を試みたのだ。カウンターに設けた中2階や2階のロフトスペースなど、多層構造もこの家の魅力だ。ノートブックを開いてメールをチェックしたり、昼寝や瞑想に耽ったりと、遊び心のある小空間が日常のシーンをわくわくさせるに違いない。
また、一般住宅では初めてという地下水ヒートポンプによる温水床暖房を導入。水温が安定している地下水は地中熱と比べて採熱温度が高く、貯水タンクは融雪槽にも活用できる。マルワホーム企画は貯水槽の施工で25年の実績があり、その技術の成果である。住まいのデザインや質感、快適な空間設計に加え、これからの時代に応える先進技術も、北国の快適な暮らしを支える大切な要素なのだ。
Data
- 敷地面積/288.38㎡(87.23坪)
- 延床面積/202.90㎡(61.37坪)
- 1階面積/119.25㎡(36.07坪)
- 2階面積/83.65㎡(25.25坪)
- 工法/木造在来工法
- 基礎/基礎断熱工法
- 屋根材/ガルバリウム鋼板
- 外壁材/エスケー化研(株)、ベルアート、キャニオン
- 内装材/珪藻土
- 床材/鉄刀木(タガヤサン)2F ウォルナット、無垢
- 開口部/m.a.p 木製サッシ、LIXIL
- 暖房/地下水ヒートポンプ 1F土間、2F床暖房
- キッチン/トーヨーキッチン、食洗機、ガゲナウ
- バスルーム/TOTO
- その他/薪ストーブ ヨツール F163、札幌軟石