施工事例

音楽大好き家族の夢を叶えた、歌って・奏でて・遊べる住まい。

住まいの提案、北海道。 vol.60

取材・文/三枝史子

どことなくアメカジショップの雰囲気を漂わせるSさんの住まい。枝番の数字は夜になるとライトアップされ、宅配サービスの人に感謝されるとか。

マットなブルーでフレーミングされた3階建ては、1階に親世帯、2・3階にSさんご家族が暮らす2世帯住宅である。住所の枝番が赤い数字でシンボリックに表現され、丸くデザインされた表札はカフェのサインのよう。そして、奥さまの愛車である黄色いハマーがこの家にぴったり似合う。住む人の個性が発揮された家は、外から見ているだけでも楽しい。家族みんな仲よく笑って暮らしているのだろうな。そう思わせるのだ。敷地は約30坪、もとは奥さまの実家だった家を2年前に建替えた。住宅設備の会社を営むご主人は職業柄、数々の住宅建築の現場と関わってきたが、なかでもマルワホームにシンパシーを感じ住宅の新築を依頼した。「現場監督をはじめ職人さんたちの雰囲気がすごくいいんです。建替えるなら、かっこいい家にしたい、自分たちの好きな家にしたいと考えていたので、相談しやすいマルワさんなら夢を叶えてくれると思いました」。

好きなものだけセンスよくディスプレイしたキッチン。カウンターに立つご主人はカフェのマスターのよう。

Sさんご夫婦と長男長女が暮らす2・3階は30坪に満たない面積だが、家族の思いが凝縮された愛着あふれる空間だ。とくにこだわったのが、幼いころから音楽にふれてきた兄妹が楽器を奏でるための防音室。自宅で練習やセッションができる防音性の高いスタジオを設けるのがいちばんの優先事項だったのだ。「僕もカミさんも音楽を聴くのは好きだけど楽器はできないので、子どもに夢を託した感じですかね」。ご主人はそういってシャイな笑顔を見せた。キッチンカウンターの側面に描かれた「LET’s ROCK」の文字はまさに家族の気持ちを表すもの。もっとも、このアイデアは奥さまによるものでインテリアのほぼすべてに、奥さまの思い入れが反映されているそうだ。

ショップのサインのような表札が個性的。
奥まった玄関に続く長いアプローチには自転車も安心して置ける。
2階玄関ホールの一角にある造作の手洗い。
帰宅時やトイレの手洗いはここで。
2世帯で玄関が分かれており、Sさん世帯の玄関がこちら。シューズの並べ方にもこだわりが感じられる。
キッチンの床はポップな市松模様のピータイル。お料理の時間も陽気な気分に。
キッチンから眺めたリビング。パソコンカウンターから続く収納棚など造作家具が充実し、空間を心地よく整えている。
圧迫感のないスケルトン階段の左手が防音スタジオ。

中学生のOTOくんは5歳のときからドラムをはじめ、いまやプロのミュージシャンともセッションするほどの腕前に。外出自粛が敷かれる前は月に4~5回ライブで演奏し、家族で観に行っていたという。妹のUTAちゃんはギターとダンスを習う快活な小学生だ。自宅には音楽つながりの友人が多く訪れ、10人規模のホームパーティを楽しむこともあるという。スペースは限られているものの、やりたいことがたくさんあったというSさんご夫婦。「2階はとことんこだわろう」ということで、好きな家具、好きなインテリアで統一した。とくに、スタジオ前の壁面に取り入れたグレーの波板は、外装材に使うガルバリウム鋼板でいちばんのお気に入りだ。カフェのような非日常を感じさせてくれるのがいい。「遊びに来てくれた友だちが家を褒めてくれるのがうれしいですね」。

スタジオから見たリビングの風景。

そんな奥さまは昔からアメリカのおもちゃが大好きで、アメコミのキャラクターやモチーフを住空間のいたるところに配置している。それでいて部屋の中がすっきりしているのは、抜群のディスプレイセンスと魅せる収納の技に長けているからにほかならない。LDK全体で12帖強の空間ではあるが、ベランダの前には遮るもののない視界が開け、共通の趣味を持つ家族が距離を縮めて暮らすのは、むしろ快適なのではと想像する。ソファの前に置かれたセンターテーブルは、ひと昔前の喫茶店で見られたテレビゲームを模したもので、奥さまのリクエストによりご主人が手づくりした。中にテレビを埋め込むという凝りようで、大人は懐かしく、子どもは新鮮に感じることだろう。

防音スタジオの壁は外装材で特別な雰囲気に。大きな窓越しにリビングからスタジオの様子が見える。
ドラムを叩くOTOくんの練習用に設けたスタジオで、ときには兄妹のセッションも。
UTAちゃんの部屋はアメリカンコミックの世界をイメージさせる陽気なインテリア。

3階はウォークインクローゼットのある主寝室と兄弟の個室、ユーティリティと浴室がある。5帖に満たないUTAちゃんの部屋にはL型のデスクカウンターが配され、ご主人がDIYで仕上げた飾り棚がインテリアのアクセントに。さらに、黄色と白のペンキで仕上げたストライプの壁も「パパがつくってくれたんだよ」とUTAちゃん。洋服の収納スペースはカラーボックスを効果的に組み合わせ整理整頓。見た目にも楽しくポップな収納術はママの得意技で、家具なしでコスト削減のお手本にもなりそうだ。一方、OTOくんの部屋はグレートーンのシックな雰囲気。兄妹それぞれの個性が生かされた空間づくりがおもしろい。

UTAちゃんの部屋はアメリカンコミックの世界をイメージさせる陽気なインテリア。
落ち着いた雰囲気のなか、心穏やかに作曲にも専念できるOTOくんの部屋。
3階ホールに造作した本棚は、コミックがジャストサイズで納まる美しさ。
ビタミンカラーを差し色に使用。ロールの置き方にも美意識が感じられる。

主寝室手前のホールには造り付けの本棚があり、コミックがびっしり。見るからに壮観な光景に、ご主人は「漫画喫茶みたいな家にしたかったので、こうして整理できてうれしいですね。2年前の大地震のときも本が1冊も飛び出ることがなく安心でした」。話を聞けば聞くほど、この家には楽しさがあふれている。「ステイホームのときはヒマだったので、僕とUTAがキッチンで立ち食い寿司やケーキ屋さんを開店させて、カミさんと息子に振る舞いました。子どもと一緒に看板をつくるところからはじまって、それをSNSにアップして遊んでました(笑)」。

ほかにも、防音スタジオでカラオケを熱唱したり、演奏を楽しんだり。家族みんなで笑顔をつくりながら絆を深めていけるのが、Sさんの家の最大の魅力である。

最小限の造作で仕上げた洗面台も、お気に入りのテキスタイルで楽しく演出。

Data

  • 敷地面積/102.00㎡(30.85坪)
  • 延床面積/143.88㎡(43.52坪)
  • 1階面積/52.17㎡(15.78坪)
  • 2階面積/45.75㎡(13.83坪)
  • 3階面積/45.96㎡(13.90坪)
  • 工法/木造在来工法
  • 基礎/基礎断熱工法
  • 断熱材/付加断熱
  • 屋根材/ガルバリウム鋼板
  • 外壁材/ガルバリウム鋼板0.4mm・シーゲル社、スタンダードウォール とど松
  • 内装材/ビニールクロス・一部ガルバリウム鋼板 小波 ロイヤルグレー色
  • 床材/シーゲル社/無垢材
  • 開口部/リクシル社/エルスターS Low-Eクリア
  • 暖房/森永エンジニアリング社、温水パネル暖房
  • キッチン/タカラスタンダード社、グランディア
  • バスルーム/パナソニック社、オフローラ

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